真壁円は、少し不穏に見える。
そう言われることもある。
けれど、それは仕事の一部だけを見た印象だ。
彼女の仕事は、少しだけ特殊だ。
それ以外は、特に変わらない。
朝に起きて、身支度を整える。
コーヒーを淹れて、犬に声をかける。
鳥の水を替える。
それから、部屋を出る。
報酬は、少しばかり良い。
給料は、同じ年齢の平均より少し高い。
それ以上でも、それ以下でもない。
代わりに、融通が利く。
職場の一部に、彼女の部屋がある。
愛犬と愛鳥も、そこに連れてくることができる。
勤務の合間に、散歩に出ることもある。
自分の部屋に様子を見に戻ることもある。
もちろん、仕事が優先される。
ただ、その範囲で許されている。
それは、最初から用意されていた条件ではない。
彼女が望んだものだ。
報酬として。
高い地位はいらない。
大きな権限もいらない。
特別な肩書きも必要ない。
その代わりに、時間の使い方を選ぶ。
誰と過ごすかを選ぶ。
どこで過ごすかを選ぶ。
結果として、少しだけ整っている。
無理がない。
足りている。
来訪者は、来る。
見えることもあれば、見えないこともある。
それについて、彼女は多くを語らない。
記録は続く。
対応は、変わらない。
「維持」
それで仕事は足りる。
それで生活も足りている。
だから、不穏には見えにくい。
ただ少し、静かすぎるだけだ。